| 早生 | 「祐佳は……またお菓子作りか?」 | 
| 祐佳 | 「うんっ! もう少しで焼き上がるから、ちょっと待っててね」 | 
 
 |  祐佳は笑顔を俺に振り向けてから、ボウルの中身をかき回しだした。 | 
 
 |  ボウルの中身は生クリームらしいことが、ボウルから飛び出してくる白い物からわかる。 | 
| 早生 | 「……もっと丁寧に混ぜた方が、いいんじゃないか?」 | 
| 祐佳 | 「えっ、なんで?」 | 
| 早生 | 「いつも『お菓子作りは真心なんだよ』とか『混ぜる回数が一回違うだけで味が変わるんだよ』とか 
 言ってるじゃないか」 | 
| 祐佳 | 「じゃあ、お兄ちゃんも一緒に作る? あとはデコレーションするだけだから」 | 
| 早生 | 「俺が手を出したら、ぐちゃぐちゃになっちゃうぞ?」 | 
| 祐佳 | 「お兄ちゃんは器用なんだから、慣れれば出来るようになるって」 | 
| 早生 | 「せっかく祐佳が作ってくれてるんだから、俺は美味しいままで食べたいな」 | 
| 祐佳 | 「いっつもそうやって逃げるよねー、お兄ちゃんは」 | 
| 早生 | 「俺がお菓子を食べられるのは、祐佳が美味しく作ってくれるからだよ」 | 
| 早生 | 「いつも俺の好みに合わせて作ってくれてるだろう?」 | 
| 祐佳 | 「……うん、まあね……」 |